ネット社会を席巻できなかったプロバイダ
格安ADSL回線提供サービスを実施するプロバイダの登場により、いつでも自宅ならインターネットを楽しめる環境になりました。東京都内ならもっと安い料金で利用できるとホームページに掲載してあったので、やっぱり都会はネット環境が違うなと思いました。同じプロバイダを利用する人が増えればいずれは同プランも全国展開となり、さらに安い値段でインターネットを楽しめるのではないかと淡い期待を抱きました。
ただ、気になることもあったのです。加入したプロバイダが宣伝広告している気配が見られないのです。あの大手のように赤字覚悟で無差別にモデムを配布するような真似は事業・経営規模の違いからできないでしょうが、何もしなければ加入者は増えません。恐らくは薄利多売方針で決定した価格であるのに加入者が増えなければいずれは価格を上昇させるか、経営が行き行かなくなります。周囲に聞いても、プロバイダの名前や契約者が広がっている気配はなく、家電量販店の店員さえ名前を知らない状態が続きました。
そして嫌な予感は的中、プロバイダは経営難に陥り、さらに甘い見通しで配当を見込んで募集した投資商品が詐欺の疑いをかけられたのです。結局、ADSLサービスを提供し続けることはできなくなり、プロバイダは大手に吸収されることで事業と事件の収拾をはかったのでした。また、元のダイヤルアップ接続によるケチケチインターネット生活に戻るのかと思っていたところ、合併先から希望するなら契約を継続したい旨の連絡をいただきました。結局プロバイダを乗り換えたような形でADSL回線は維持されることになったのです。ちゃちな旧プロバイダのモデムを返送する時、込められた夢が霧散したことに寂しさを覚えずにはいられませんでした。
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